6月は本棚を新調しました。今家にある本棚から本が溢れてしまい、ずっとデスクやら、キッチンやらに積まれていて、危うく居住スペースを本たちに持っていかれるところでした。
本棚を新調することは、読書家を名乗るものたちにとっては一大事だと思います。革命家を名乗るものたちが、体制を打ち倒そうと決めるのと同じくらいに一大事なのです。ちょっと何を言ってるのかわかりませんが。
そんなわけで、相変わらず本は増やしておりますが、いっこうに本を読むペースが上がらないというジレンマに苦しみながら今日も生きているくまねこです。
6月の読了本はこんな感じでした。
1.『移動祝祭日』アーネスト・ヘミングウェイ
有名な作家は作品のイメージが一人歩きして、その作家の人間性や生い立ちを置き去りにしてしまうことが多い。ヘミングウェイのことは酒好きで釣り好きのおっさんぐらいにしか思っていなかった。しかし、彼のパリでの修行時代や人生の苦悩のようなものを知って、そのイメージは崩れ去った。最初に読んだのが、この『移動祝祭日』で良かった。
2.『べにはこべ』バロネス・オルツィ
『赤毛のアン』シリーズで有名な村岡花子さんが愛したオルツィの『べにはこべ』に、ぼくもひたすらワクワクさせられた。秘密結社、義賊的英雄──こんな話、ワクワクしない方がおかしい。フランス革命を別の角度から見ることができたのも面白かった。
3.『斜陽』太宰治
『人間失格』『ヴィヨンの妻』は読んでいたけれど、太宰に傾倒するのはちょっと普通の文学青年っぽくて嫌だなとか思っていた若い頃。だから、今になって太宰を読んでみたいなんて、面倒臭い中年になりつつある。そんな中年をも夢中にさせる”文学”が太宰だ。この作家は本当に自然に絶望を身につけてきたのだなと思える。
4.『雨鱒の川』川上健一
ノスタルジーというのは心の隙であり、人によってその形は違うだろうと思う。だけど、この作品には、ぼくには持ち得なかったはずの風景すらも懐かしく思わせてくれるような風景がある。夏になるとふとこの景色が懐かしくなって、毎年のように読んでいる。大切なものを思い出させてくれる作品だ。
5.『初夏ものがたり』山尾悠子
初夏は何か現実と非現実のあわいを曖昧にしてしまうような、そんな幻想的な空気がある。季節の変わり目だからだろうか。死んだ人間が帰ってくる──そんな儚く刹那的な寂しさがほろりと胸に染みるような作品だった。
今月は体調を崩して週末寝て過ごしていたこともあり、少し読書は控えめになっていましたが、それでも素敵な作品たちに出会えました。
どこか懐かしさに誘われるような作品ばかりだったのは、季節の変わり目だったからかもしれないですね。
今月も素晴らしい読書体験でした。