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日々夏休みのノリで読書感想文を書いています。

【まとめ】2024年7月の読了本

2024年7月の読了本

最近、職場が移転してしまい、今まで丸善書店が近かったのに、帰りに立ち寄れる書店がなくなってしまったと悲嘆に暮れていたら、ジュンク堂書店を通勤途中に見つけてしまい、再び舞い上がっているくまねこです。

 

書店というと、皆さんもきっとお気に入りの書店がありますよね。ぼくは丸善書店が大好きで、とく日本橋店のあの雰囲気──なんて言えばいいのかちょっと言葉が見つかりませんが、とにかく大好きなのです。丸の内店もいいのですが、あの街は低俗なぼくがうっかり足を踏み入れてしまおうものなら石を投げつけられてしまうので、あまり近づかないようにしています。

 

しかし、ジュンク堂書店はこれまであまり縁がなかったのですが、つい先日、意を決して中に入ってみるとそこにはもう最高の空間が広がっていました。落ち着いた雰囲気の店内に、仕事に疲れたサラリーマンやOLのお姉さんたちが本に癒しを求めて、文庫本を吟味している様子はたまりません。品揃えも豊富で、今度からはこのジュンク堂をハードリピートしてしまいそうです。

 

というわけで、バンバン積読を増やしているくまねこですが、7月の読了本はこんな感じでした。

 

 

1.『未来のイブ』ヴィリエ・ド・リラダン東京創元社

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実は再読本でしたが、装丁もかっこよく、ぼくが人生で初めて読んだSFということもあり、大好きな作品です。何年か前に読んだきりになっていたので、久しぶりに読んだのですがやっぱり面白いですね。アンドロイドという設定を使い、人間の本質を問うた作品で、これが19世紀に書かれたなんて信じられません。

 

 

2.『螢川』宮本輝KADOKAWA

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これも再読本で学生の時に読んだきりでしたが、強烈な印象をぼくに残した一冊でした。宮本輝の作品はちょくちょく読みますが、文学とはこういうものだという一つの基準を示してくれるような気がします。生きていると色々なことがありますが、人生というものを信じさせてくれるような作品です。

 

 

3.『クヌルプ』ヘルマン・ヘッセ|新潮社

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ヘルマン・ヘッセ──実は初読みでした。結構ガイブンを読んできた風を吹かせていますが、こういう名作たちを実は通ってきていないことが多々あります。ヘッセといえば『車輪の下』だと思いますが、『クヌルプ』を最初に読んでよかったと思います。漂白の旅職人クヌルプという男が大好きになりました。

 

 

4.『堕落論坂口安吾|新潮社

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これも確か再読だったかな? 学生時代に一度読んだはずです。でも、全くと言っていいほど内容を覚えていなかったので、再読です。すごいネガティブな感じのタイトルですけど、坂口安吾の茶めっけがたっぷりでとても面白く読みやすい。評論や随筆なんかをまとめたもので、とくに小林秀雄なんかと絡みは好きでした。

 

 

5.『十九歳のジェイコブ』中上健次KADOKAWA

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こちらも再読ですねえ。どことなく、『限りなく透明に近いブルー』に似ているのですが、おそらく意識してのことだったんじゃないかと思います。俺ならこう書いてやるぞ、みたいな中上健次のどこか喧嘩腰の姿勢が浮かんできます。ドラッグ、セックス、ジャズ──若さという満たされない渇きを、あの独特の悪文で描いていて、それがまたいい味を出しているんです。

 

 

6.『少女地獄』夢野久作KADOKAWA

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ドグラ・マグラ』を読む前の準備体操の感覚でやられましたが、準備体操なんてものじゃなかったです。人間の抱える地獄を、ある種、偶像化された”少女”というモチーフを通して描こうなんて正気の沙汰じゃないですね。この世界観はすごいです。他の作品もとても気になるところです。

 

 

7.『ベトナム戦記』開高健朝日新聞出版

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原点回帰といったところでしょうか。いつだってぼくの文学の地平の先にはこの作家がいます。その作家の代表作、実はまだ読んだことがなかったんです。『夏の闇』『輝ける闇』もベトナム戦争を題材にしていましたが、あれは小説であり、これは見てきたそのままの戦争が描かれています。最前線にまで赴いて作戦に同行し、銃弾の雨の中で見てきた「本物の戦争」が克明に記されています。

 

 

まとめ

7月は上記の計7冊を読みましたが、『クヌルプ』は結構自分の中でグッと来て、『少女地獄』はもっと感性の瑞々しい時に読みたかったなと自分の読書生活をちょっと後悔してみたり。衝撃だったのは『ベトナム戦記』で、またヒロシマナガサキの日が近づく中で戦争というものについて考えられたのは良い機会だったなと思います。今月も素晴らしい読書体験でした。