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日々夏休みのノリで読書感想文を書いています。

046|『十五少年漂流記』ジュール・ヴェルヌ|友情、努力、勇気!

2024.08.20 読了

冒険は少年たちの憧れである。ぼくの幼い頃は、”冒険”と称して、その辺の空き地の草むらに入っていったり、家の近くのドブ川がどこから流れてくるのか隣町まで上流まで歩いて遡ったりと、ちょっとしたことが冒険だった。今は町中で草むらを見かけることなんてまずないし、ドブ川も土手がコンクリートの護岸で固められて整然としてしまい、あのワクワクするような冒険感はない。

 

ところで、冒険には絶対に「隊長」と呼ばれる役割が欠かせない。だいたいこういうのはグループの中の年長者がやるのが決まりであって、そして、次に「副隊長」だ。しかし、ここで問題が起こるわけだ。遊んでいるグループが複数人だと、大体この「副隊長」の取り合いで喧嘩になるのだ。そうして、最終的には隊長以外は全員副隊長というカオスな状況が生まれる。社長以外の全員が役員みたいな零細企業のようになる。これはこれで面白いことではあるけど。

 

ともあれ、そのように冒険には必ず「隊長」と呼ばれる人間が不可欠であり、15人の少年たちの冒険ともなると、統率する人間が必要である。”子ども”というのは、これは自分の子や甥っ子たちを見ていてわかることだが、簡単に死にに行こうとする生き物なのだ。だから、注意深く導く人間が必要なのである。

 

この『十五少年漂流記』は子ども向けに書かれた古典であり、そういう教訓めいたものがしっかりとしていて、少年たちに役割がはっきりと分かれている。「大統領」と呼ばれる少年が選出され、それを賛同する少年とサポートする少年、そしてそこに盾突くことで他の少年たちの結束力の強化に一役買う役割の少年もいる。

 

あらすじとしては、15人の少年たちが乗る船が難破して、無人島に漂着したことでサバイバル生活を送ることになるわけだけれど、帰路を探し出すための探検や食糧確保のため狩りなど、冒険感が満載で読んでいてワクワクしてくる。

 

ヴェルヌは『海底二万里』以来だったけれど、実は『十五少年漂流記』の方が先に読んでいて、最初に読んだ小学生の頃も同じようにぼくはワクワクしてこの本を読んでいた。だから、大人になって、書店でこの本を見かけるたびに懐かしい気持ちになり、今になってまた手に取ったというわけである。

 

古典ということで、子どもたちの人格が仕上がりすぎていて、どことなく胡散臭く感じる部分もあるが、子ども向けということで物語に打算やたいそうな隠喩もなく、素直に楽しめるのがいいところである。つまり、”友情、努力、勇気”がテーマのシンプルな物語である。

 

ぼく個人としては、リーダーの少年よりも、ドノバンという誰彼かわまず楯突く少年のクズっぽいところや、水夫係のモーコーというサポートに徹しながら実はいちばん有能なんじゃないかと思える少年が好きである。こども向けの作品だから、教訓めいたところは若干説教くさいけれど、童心に帰ることができるそんな作品である。

 

 

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