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日々夏休みのノリで読書感想文を書いています。

【まとめ】2024年9月の読了本

2024年9月の読了本

最近、本を読むことだけが生き甲斐となり、これまでも出不精であったのにさらに磨きがかかってしまいました。あ、デブ症ではないです。まあ、太ってはいますけど。

とまあ、こんなくだらないことを書いてしまうくらい、9月は何もありませんでした。なので、さっさと9月に読んだ本たちをまとめておきましょう。

 

 

1.『半自叙伝』古井由吉河出書房新社河出文庫

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自分の人生を振り返った時に、ぼくは真っ先に何を書くだろうと思うと、あまり文学的なことはないなと思う、それは古井由吉だって同様だ。ただこの人は書いてきただけなのだ。小説家というのはそれだけでいいのだ。思想界の巨人である佐々木中氏をして、日本語圏最大最高の作家と評された小説家の半生は、どこか安心できるものがあった。

 

 

 

2.『ユルスナールの靴』須賀敦子河出書房新社河出文庫

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須賀敦子については全集を持っていて、一度全部通して読んでいるのだけれど、その中で印象的なエッセイがこの『ユルスナールの靴』である。ユルスナールなんて日本ではあまり知られていないし、世界的に見ても特殊な作家であると思う。そこに自分の人生を映して語ることのできる須賀敦子はやはり稀有の人だったんじゃないかと思う。

 

 

3.『狭き門』アンドレ・ジッド|新潮社(新潮文庫

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高校生の時に一度読んで、ただの悲劇的な恋というだけで、当時恋愛脳真っ只中にいたぼくはこの作品を名作と位置付けてしまっていた。名作であるという評は変わらないけど、宗教などというあまりに大きなテーマを実験的に使い、このアイロニカルな悲劇を描いたこの作品は凄まじい。

 

 

4.『深い河』遠藤周作講談社講談社文庫)

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信仰とは依存という形を最も理想的な形に置換されたものだと思っていたけれど、信仰を深く突き詰めた先に、この物語で描かれる『信仰』があるのだろう。それを世界に問おうとした作家の集大成とも呼べるべき作品だと思う。

 

 

5.『トーイン:クアルンゲの牛捕り』キアラン・カーソン東京創元社(創元ライブラリー)

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ケルト伝承のアルスター伝説群のなかで最も長大な「クーリーの牛争い」を現代語訳した本書は、ケルトでは有名なクー・フーリンやフェルグス、メイヴたちが登場する。神話とか昔の伝承ってなぜかみんなよく詩を詠むけど、あれって何なんだろうね? それはさておき、イギリスを愛した作家の最も誇るべき仕事であったんじゃないかななんて考えて読むと胸熱。

 

 

6.『檸檬梶井基次郎|新潮社(新潮文庫

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本のブログをやっていて、『檸檬』について書いていないなんてあり得ないとのことで、久しぶりに再読した作品。鬱屈した人生とともに、光に溢れた過去まで吹き飛ばそうとしたのか、そこにどんな意味があったのか、なんて思いながら読み進めるけれど、そんな読者の思惑をよそに表題の通りに果実のあざやかな印象だけを残して終わらせるというあまりに出来過ぎたこの小説は、いわば一種の完成系だと思う。

 

 

7.『芝生の復讐』リチャード・ブローディガン|新潮社(新潮文庫

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「”アメリカ”とは何か?」という概念的な思想を、人々の些細な日常の切れ端などから掬い上げようとしたブローディガンは、やっぱりすげえと思う。『アメリカの鱒釣り』ではそれが顕著であったけれど、それをさらに押し込めたのが『芝生の復讐』である。作家特有の独特な表現が大好きだ。

 

 

まとめ

もともと大好きな須賀敦子さんは言わずもがなとして、ブローディガンという作家の再認識と『狭き門』の凄さに打ちのめされた読書体験でした。もちろん他の本たちも素晴らしい本でした。